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医療法人化が有利になる5つの条件|後継者がいなくても検討すべきケースとは

法人化

節税のための法人保険の活用が困難になっている今、医療法人化のメリットが大きい人は少なくなってきています。

しかしながら、少ないとは言え、医療法人化するべき人が一定数いることは事実です。先日受けたお問い合わせをもとに、医療法人化が有利になる条件を5つに整理して紹介していきます。

I先生
I先生

昨年開業したばかりですが、納税額が突然1,000万円を超えてしまいました。顧問の税理士にはすぐに医療法人化することを勧められましたが、子供もいないし、常勤のスタッフも雇っていない私にとって、本当に法人化すべきでしょうか。第三者からのアドバイスをお願いします。

  • 44歳
  • 内科開業医(開業1年目)
  • 奥様(43歳・看護師・専従者)

I先生が懸念されているように、後継者がいない場合は医療法人化が適していないと考えられていますが、私も顧問の税理士と同様に、I先生は医療法人化することが有利だと考えます。5つの条件に沿って、その理由を順番に説明させていただきます。

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医療法人は「特別な法人」であることを押さえておこう

医療法第7条により、株式会社などの営利法人が病院・診療所を開設することは認められていません(参考:厚生労働省

診療所を開設できるのは、医師である個人か、医療法人などの非営利法人だけです。医療法人は、この非営利性の要件を満たしつつ、医業収入を法人として受け取ることが認められた、いわば特別な法人と言えます。

一般の合同会社・株式会社(いわゆるマイクロ法人)では、そもそも医業収入を受け取ることができません。ここが、副業の節税で使われるマイクロ法人と、開業医の医療法人化がまったく別の話である理由です。

医療法人化が有利になる5つの条件

①利益率・所得水準が高い

日本は累進課税制度を採用しているため、所得が高くなるほど、税率も上がります。

その結果、1人で5,000万円の報酬を受け取るのと、家族で3,000万、1,000万、1,000万と分けて受け取る場合では、世帯年収は同じ5,000万円ですが、支払う税金に500万円以上の差が生まれることもあります。

所得を分けるだけで節税できるなら、分ける方がお得だと考える人も多いですが、注意点があります。

例えば、常勤の医師(院長)と、特に資格を持っていない、時々受付を手伝っている方(奥様)の給与を同じにすることは、一般の常識から乖離しているため、NGです。

そうした場合、数年後に税務調査官が来て、追徴税を課される可能性が高いです。それでは、本来払うべき金額よりも多くの税金を払わなければならなくなるため、本末転倒です。

I先生に関しては、奥様が看護師資格を保有し、フルタイムで医院を手伝っているため、現在の専従者給与の500万円をもう少し増額することは可能だと考えられます。

しかし、一般的に考えると1,000万円以上の給与を受け取っている看護師はほとんどいないため、その昇給幅とそれによって得られる節税効果は限定的です。

I先生
I先生

仕事内容から逸脱した給料は認められないということですね

②家族に相応の役割がある

しかし、奥様が医療法人の役員である場合は状況が変わります。役員報酬はその人が「何をしているか」よりもその人の「責任」に基づいて設定されるため、特に資格を持っていない奥様に1,000万円以上の役員報酬が支払われることも珍しくありません

また、現在、時々病院の経理などを手伝っているお母さんを役員に任命することで、報酬を増やすことも可能です。

I先生の医院は月の売上が800~900万円程度で推移し、利益率が50%を超えています。ここまで利益率が高いと、医療法人にならずに税金をコントロールするのは難しいと言えます。

一般的に30%の利益率が望ましいとされていますが、I先生のように大きくこれを超えている場合は、後継者がいなくても医療法人化を検討する価値があります

③まとまった退職金を計画的に用意したい

法改正により法人保険を使って節税することは困難になりましたが、退職金のために法人保険を使うことは今後も有用です。

個人開業医のままだと、退職金として計画的に準備できるのはiDeCoと小規模企業共済くらいですが、医療法人であれば一部を経費にしながら退職金を増やすことができます。

個人開業医として経営を続け、iDeCoと小規模企業共済への加入によって積み立てられる退職金は、ご夫婦合わせて60歳時点で約5,000万円となります。(毎月のiDeCoは6.8万円、小規模企業共済へは毎月7万円積み立てる前提)

ご夫婦で月に30万円程度の生活費であれば、5,000万円程の退職金でリタイア後も十分に過ごすことができます。

しかし、I先生の場合は月の生活費が100万円を大幅に超え、趣味関連の支出も多いため、退職後10年以内に資金が枯渇する可能性が高いと考えられます。

60歳でセミリタイア(週の診療日数を3-4日に減らす)、70歳でフルリタイア、夫婦ともに90歳まで生きると想定した場合、現在の生活を維持するために必要な退職金は夫婦で3.2億円と推定されます。その資金を法人保険を利用して医療法人の中で準備することをお勧めします。

④厚生年金に加入して将来の年金を増やしたい

個人開業医は国民年金のみが基本で、スタッフが5人未満であれば厚生年金への加入義務もありません。(参考:税理士法人テラス

一方、医療法人は厚生年金保険の強制適用事業所となるため、理事長も厚生年金に加入することになります。将来受け取れる年金額は、国民年金だけの場合より確実に増えます。

ただし良いことばかりではなく、報酬水準によっては社会保険料の負担そのものが個人時代より増える点は覚えておいてください。

負担が増える分、将来の年金という形で戻ってくると捉えれば、老後資金の準備手段の一つとして前向きに考えられます。

⑤将来、分院展開など事業拡大を考えている

個人開業医は、原則として開設者本人が管理者(院長)を務める必要があるため、実質的に1施設のみに限られます。

医療法人であれば、理事長のもとに複数の管理者(院長)を置けるため、分院展開など複数医療機関の経営が可能になります。

今は1施設でも、将来的に分院を出す可能性が少しでもあるなら、早めに医療法人化しておく方がスムーズです。

I先生のケースに当てはめると

追加で、奥様から、I先生は稼いだら稼いだだけ使いたくなる性格で、年収が高くても貯金ができないという相談を受けていました。

そこで、役員報酬を1,700万円とし、それ以外の資金は法人に強制的に残し、退職金やその他の運用に充てる仕組みを提案しました。

I先生は「後継者がいない」という点だけを見れば医療法人化に不向きなケースですが、①利益率50%超③まとまった退職金が必要という2つの条件に強く当てはまるため、医療法人化をお勧めしました。

まとめ

後継者がいない場合など、一般的には不利と言われるケースであっても、①〜⑤の条件に複数当てはまる方には、医療法人化するメリットがあると考えられます。

ただし、これらの条件を満たしていても、あと5年で引退する方には向かないかもしれないので、他の条件も考慮して判断する必要があります。そのため、迷った場合は専門家に相談しましょう。

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