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医療法人の設立手続き・費用・スケジュールを徹底解説|認可申請は年2回、準備は1年前から

医療法人設立のアイキャッチ画像 法人化

「医療法人化しよう」と決めたあと、多くの開業医の方が最初につまずくのが、手続きの全体像が見えないことです。

株式会社なら思い立った日に登記できますが、医療法人は都道府県知事の「認可」が必要で、しかもその申請は年に2回しか受け付けてもらえません。タイミングを1回逃すと、法人化が半年遅れます。

本記事では、医療法人(持分なし社団医療法人)の設立要件、申請から登記・開設までの流れとスケジュール、実際にかかる費用、そして認可後に待っている手続きまでを、東京都の令和8年度スケジュールを例に具体的に解説します。

「そもそも医療法人化すべきかどうか」の判断軸は、こちらの記事で解説しています。まだ迷っている方は先にご覧ください。

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医療法人を設立するための要件

医療法人は営利法人ではないため、株式会社のように「お金と登記書類があれば作れる」わけではありません。認可を受けるには、人・お金・場所それぞれに要件があります。

人の要件:社員3名・理事3名・監事1名

  • 社員(最高意思決定機関の構成員):原則3名以上。株式会社の株主にあたる存在で、院長・配偶者・親族で構成するのが一般的
  • 理事:3名以上。理事長は原則として医師または歯科医師であることが必要
  • 監事:1名以上。理事や職員との兼任はできず、理事の親族も不可。税理士や知人に依頼するケースが多い

意外と見落とされるのが監事です。「配偶者を監事にすれば手軽」と考える方がいますが、親族は認められません。設立準備の早い段階で、引き受けてくれる人を確保しておきましょう。

お金の要件:運転資金2か月分の現預金

設立時には、年間支出予算の2か月分以上の運転資金を現金・預金で法人に拠出する必要があります。例えば年間の支出が6,000万円のクリニックなら、1,000万円以上の現預金が必要になる計算です。

この現預金に加えて、個人診療所で使っていた医療機器や内装設備なども「拠出財産」として法人に移します。ただし、拠出には次のような制約があります。

運転資金の借入は法人に引き継げない

個人時代の借入のうち、法人に引き継げるのは医療機器や内装など「拠出する財産を買うために借りたお金」だけです。運転資金として借りた分は引き継げず、院長個人が返済を続けることになります。借入の契約書や領収書で「設備資金である」ことを裏付ける必要があるため、法人化を見据えているなら、借入時点から名目を分けておくのが賢明です。

場所の要件:自己所有か、10年以上の賃貸契約

診療所の建物は、法人の自己所有か、10年以上の賃貸借契約(または更新の確約)が求められます。テナント開業の場合、現在の契約期間が短いと、貸主に契約の見直しをお願いする必要が出てくるため、早めに確認しておきましょう。

設立の流れとスケジュール:認可申請は年2回だけ

医療法人設立の流れ。仮申請から本申請、医療審議会、認可、登記、開設許可、保険医療機関指定までの7ステップの図解

医療法人の設立は、都道府県への仮申請(事前審査)→本申請→医療審議会→認可という順番で進みます。多くの都道府県で申請の受付は年2回に限られており、仮申請から認可書の交付までは約6か月かかります。

東京都の令和8年度のスケジュールを見ると、全体像がつかみやすくなります。

ステップ第1回第2回
仮申請の受付2026年8月31日〜9月4日2027年3月11日〜3月17日
事前審査2026年9月下旬〜2027年4月上旬〜
本申請の提出期限2026年12月28日2027年6月30日
医療審議会2027年2月初旬2027年8月初旬
認可書の交付2027年2月下旬2027年8月下旬
法人としての診療開始(目安)2027年4月1日2027年10月1日

(参考:東京都保健医療局「医療法人設立、解散、合併認可等に係る年間スケジュール(令和8年度)」

仮申請の受付期間はわずか1週間です。この1週間に間に合わなければ次回は半年後になるため、「いつ法人として診療を始めたいか」から逆算して準備を始める必要があります。

仮申請の書類(定款案・事業計画・収支予算・財産目録など)を揃えるのに2〜3か月はかかります。「4月から法人で診療したい」なら、前年の春には動き出すのが現実的です。

ステップごとにやること

  1. 準備(仮申請の2〜3か月前〜):税理士・行政書士に依頼し、定款案、設立趣意書、事業計画書、収支予算書、財産目録、社員名簿、役員候補者名簿などを作成。監事の引き受け手を確保。運転資金2か月分の現預金を用意
  2. 仮申請(事前審査):都道府県に書類一式を提出。ここで実質的な内容審査が行われ、修正指示が何度か返ってくる。東京都では令和8年度第1回から、仮申請はオンライン提出に切り替わった
  3. 設立総会・本申請:修正が終わったら設立総会を開き、社員・役員を正式に決定。実印を押した正本を提出
  4. 医療審議会・認可:都道府県の医療審議会で審議され、知事の認可書が交付される
  5. 設立登記:認可書の交付から2週間以内に法務局で登記。この期限を過ぎると認可が無効になるおそれがあるため、最も注意すべき期限
  6. 診療所の開設許可・保険医療機関の指定:登記後、保健所に法人としての開設許可を申請し、厚生局に保険医療機関の指定を申請。同時に個人診療所の廃止届を出す
  7. 法人として診療開始:保険医療機関の指定日(通常は月初)から、法人としての診療がスタート

個人診療所から法人への切り替えでは、個人の廃止日と法人の開設日を連続させることが重要です。ここに空白ができると、その期間は保険診療ができません。保険医療機関の指定は個人から法人への引き継ぎとして扱われるのが通常で、専門家に依頼していれば日程は調整してもらえます。

設立にかかる費用

「医療法人の設立には100万円程度かかる」とよく言われますが、その内訳を知っておくと納得感が違います。実は、国や自治体に払う法定費用はほとんどかかりません

項目金額の目安備考
設立登記の登録免許税0円医療法人は非課税(株式会社なら最低15万円)
定款の認証費用0円知事の認可を受けるため、公証人の認証は不要
各種証明書の取得数千円〜数万円登記事項証明書、印鑑証明書、残高証明書など
診療所開設許可の手数料2万円弱都道府県により異なる
専門家報酬(行政書士・税理士)60万〜100万円設立認可申請の代行。費用のほぼすべてがここ

つまり、費用の実体は専門家への報酬です。書類作成から都道府県とのやり取り、修正対応まで半年以上にわたる伴走になるため、この報酬は妥当な水準と言えます。逆に、自力で申請して費用を浮かせようとすると、書類の不備で仮申請に間に合わず半年を失うリスクの方が大きくなります。

設立後に増えるランニングコスト

設立費用よりも意識しておきたいのが、法人化後に毎年かかるコストです。

  • 法人住民税の均等割:赤字でも年7万円程度が発生
  • 税理士の顧問料:法人決算は個人の確定申告より手間がかかるため、月額・決算料ともに上がるのが一般的
  • 社会保険料の事業主負担:医療法人は厚生年金・健康保険の強制適用事業所になり、スタッフの保険料の半分を法人が負担する
  • 都道府県への事業報告:毎年、決算後3か月以内に事業報告書・財産目録などの提出が必要。理事の任期は2年なので、2年ごとに役員変更の登記も発生する

健康保険については、個人開業医時代に医師国保に加入していれば、法人化後も医師国保を継続できます(協会けんぽより保険料を抑えられるケースが多い)。この点は法人化前に必ず確認しておきましょう。

認可後に待っている手続き一覧

認可はゴールではなく、ここから2〜3か月の間に届出ラッシュが続きます。提出先ごとに整理しておきます。

提出先手続き期限の目安
法務局設立登記認可書交付から2週間以内
都道府県登記事項の届出登記完了後すみやかに
保健所法人としての診療所開設許可申請 → 開設届、個人診療所の廃止届開設・廃止から10日以内
厚生局保険医療機関の指定申請、施設基準の届出開設日に合わせて事前に
税務署法人設立届出書、青色申告承認申請書、給与支払事務所の開設届、個人事業の廃業届設立から2か月以内(青色申告は3か月以内)
年金事務所健康保険・厚生年金の新規適用届適用から5日以内
労働基準監督署・ハローワーク労働保険・雇用保険の事業主変更手続きすみやかに

このほか、医師会への法人としての届出、取引先や賃貸借契約の名義変更、リース契約の承継、スタッフの雇用契約の巻き直しなども必要です。事務の負担はかなり大きいので、税理士・社労士と分担して進めるのが現実的です。

小規模企業共済は法人化で脱退になる

個人開業医として小規模企業共済に加入していた場合、医療法人の理事長は加入資格を失い、法人成りを理由とした解約手続きが必要になります。掛金の扱いや受け取り方によって税負担が変わるため、法人化のスケジュールが見えた段階で対応を決めておきましょう。

まとめ

  • 医療法人の設立には、社員3名・理事3名・監事1名(親族不可)、運転資金2か月分の現預金、自己所有か10年以上の賃貸契約という要件がある
  • 認可申請の受付は年2回、受付期間は1週間だけ。仮申請から認可まで約6か月、準備を含めると1年前から動く必要がある
  • 登録免許税は非課税、定款認証も不要なので法定費用はほぼゼロ。費用の実体は専門家報酬60万〜100万円
  • 認可書交付から2週間以内の登記が最重要期限。その後2〜3か月は保健所・厚生局・税務署・年金事務所への届出が続く

手続きそのものは専門家に任せられますが、「いつ法人で診療を始めたいか」を決めて逆算するのは院長にしかできません。年2回のタイミングを意識して、余裕を持って準備を始めてください。

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