教育資金贈与の非課税枠を利用するときの落とし穴

節税
K様
K様

父が2人の子どもに対して、教育費用の贈与を非課税枠を利用して検討しているそうです。贈与を受ける側として、留意すべきポイントや注意事項などはありますか?

  • 34歳
  • 美容外科 勤務医
  • 配偶者
  • お子様(5歳、3歳)
  • お父様(開業医・59歳)
  • お母様(開業医・58歳)

まずは、教育費の贈与が非課税であるという大前提を理解した上で、生前贈与を受けるべきか検討する必要があります。詳しくご説明いたします。

PR

教育資金の贈与税の非課税制度

まず、制度の概要についてご覧いただきましょう。国税庁の公式ウェブサイトには、以下のように説明されています。

平成25年4月1日から令和3年3月31日までの間に、30歳未満の方(以下「受贈者」といいます。)が、教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など。以下「贈与者」といいます。)から1信託受益権を取得した場合、2書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合又は3書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には、その信託受益権又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、受贈者の贈与税が非課税となります。

国税庁

一定期間の制度により、子や孫1人あたりの非課税上限が1,500万円とされており、非常にお得な制度と思われるかもしれませんが、先述の通り、教育費の贈与は通常非課税です。 例えば、K様のお父様が、直接お子様の学校に入学金や授業料を支払った場合、それによって贈与税を支払う必要はありません。K様のご両親はまだ50代で若く、T様のお子様もまだ小さいため、必要な都度支払う方法の方がメリットが大きい可能性があります。

非課税制度の留意点


この制度を利用する際のデメリットは、大まかに言えば3つあります。

①使途の制限・領収書の提出義務がある

制度の名前通り、贈与した資金は教育費用に限定され、金融機関には領収書などを提出する必要があります。手続きを都度窓口で行う必要がある金融機関もあり、贈与者が受贈者にとって利便性の低い金融機関を選んだため、領収書の提出手続きが非常に煩雑だという声もよく聞かれます。一部の金融機関では郵送なども対応していますが、資金を引き出す際に都度領収書を提出しなければならないなど、手間がかかる点に留意する必要があります。

②受贈者が30歳までに使わなかった部分には課税される

受贈者が30歳になる前に使い切れなかった資金は、贈与者に返還されるか、受贈者が贈与税を支払った上で引き継ぐことになります。都度学費を代わりに支払ってもらう形態であれば、贈与税を支払う必要がなかった場合でも発生する可能性があるため、注意が必要です。

③トラブルが発生するケースもある


資産家の方々の中には、相続税の軽減のために、1500万円の上限をお孫様全員に一括贈与するケースもよく見られます。しかし、過去には、贈与を行った方が病気になり、予想外の治療費がかかり、老後資金が底をついたり、兄弟間で不公平感が生じたりするなど、余計な問題が発生することもありました。T様の場合は一人っ子とのことで、後者の心配は不要かもしれませんが、教育資金として贈与されたものは、教育費以外の目的には使用できません。したがって、ご両親の生活費や万が一の際の費用に影響を及ぼさない範囲で支援を受けるようにしてください。

最後に

K様の場合、下のお子様が大学を卒業する頃には、ご両親は80歳前後でまだまだ元気でいらっしゃる可能性が高いため、急いで教育資金の一括贈与を受ける必要はありません。最初は都度贈与を受ける形を取り、例えばお子様が私立の医学部に進学することが決まった場合など、大きな教育費が必要となる際に再評価することも考えられます。質問が少し逸れますが、ご両親が経営されている医院(旧医療法人)をK様が継承する場合、教育資金にかかる税金とは比べ物にならないほどの税金が発生するでしょう。医院の継承に関しても、適切な対策を行っている人とそうでない人との間に大きな差が生じます。相続・継承対策については、早めに対策を講じることが多くの場合有利ですので、ご両親がお持ちの資産をどのように継承するかについて、この機会にご両親と専門家を交えて話し合ってみることをおすすめします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました