クリニック経営に関わる開業医とお金のニュース(2025年5月版)

経営

2025年現在、クリニック経営者が注目すべき最新ニュース・トピックを5つ厳選してご紹介します。

社会保障費の増大や医療制度の改革、デジタル技術の進展など、開業医の先生方を取り巻く環境は大きく変化しています。

本記事では「クリニック経営 ニュース」「開業医 ニュース」といった検索キーワードでも話題となっている最新トピックをブログ形式で解説し、それぞれの概要とクリニック経営への影響、経営者として取るべき対応策について述べます。

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1. 2024年度診療報酬改定とクリニック収益への影響

2024年4月に実施された診療報酬改定は、物価高騰やコロナ後の医療ニーズ変化を受けた重要な見直しでした​。

今回の改定では医療機関の賃上げ支援や基本診療料の引き上げなど表面上はプラス改定となりましたが、同時に生活習慣病管理料の再編など実質的には厳しい内容も含まれています​。

例えば、従来「特定疾患療養管理料」に含まれていた糖尿病・高血圧等の管理が「生活習慣病管理料(I)(II)」に再編され、算定要件が厳格化されました。このような変更により、定期受診間隔の延長(長期処方やリフィル処方、オンライン診療の促進)につながる可能性が指摘されています​。

さらに今後の構造改革の波にも注意が必要です。財務省の議論では、都市部で診療所が過剰な地域に対する診療報酬の引き下げ(地域別診療報酬)が検討されています。

東京では2014~2022年に診療所数が2,114施設増加し、外来医療費も32%増加したとの統計もあり、都市部の医療費抑制策として1点10円のレセプト単価を引き下げる案が俎上に載っています​。

また、厚労省のデータによれば診療所の平均利益率は8~9%と病院(約3%)より高水準であり、中小企業平均(3.6%)も上回っています​。

この数字を根拠に開業医への報酬を今後厳しく見直す可能性も示唆されています​。社会保障費の伸びに財政が警鐘を鳴らす中、診療報酬のさらなる抑制は避けられないとの見方もあります​。

経営者への影響と対応: 診療報酬の改定はクリニックの収益を直撃します。収入減となる項目(加算の廃止や算定要件強化)があれば、該当部分の業務効率化や経費削減でカバーする工夫が必要です。今後都市部で報酬単価引き下げが実現すれば、都市部クリニックは収益悪化のリスクがあります。

経営者としては、最新の改定情報や議論の動向を常にウォッチし、経営戦略の見直しを図りましょう​。具体的には、自由診療(自費診療)サービスの導入や予防医療への取組など、報酬改定の影響を受けにくい収益源の確保も検討すべきです。また、診療報酬上の加算(例えば2024年新設の医療DX推進体制加算等)は取得要件を満たして積極的に算定することで収益確保につなげましょう。

2. 「医師の働き方改革」施行とクリニック勤務体制

2024年4月、「医師の働き方改革」の新制度が本格施行されました。これは勤務医の過重労働を是正するための労働基準法改正で、他業種より5年遅れて医師にも時間外労働の上限規制が適用されたものです。

具体的には医師の時間外労働は原則として年960時間・月100時間未満に制限されました。一般企業の上限(年720時間)よりは緩和されていますが、社会的に問題となっていた医師の長時間労働に歯止めをかける狙いがあります​。

厚労省の調査では、施行前は21.2%もの医師が年間960時間超の残業を行い、3.7%は1920時間超という深刻な状況でした。この改革により、一部の勤務医には追加的な健康確保措置(面接指導や勤務間インターバル等)が義務づけられ、違反すれば医療機関に罰則も科されます​。なお、地域医療を守るため一部の医療機関では特例的に年1,860時間まで上限緩和が認められていますが(B水準・C水準の指定施設)、将来的に段階的縮小が予定されています​。

経営者への影響と対応: クリニックにおいても、勤務医や非常勤医師を雇用している場合は勤務シフトの見直しが必要です。過重労働による医師の健康被害防止は、質の高い医療提供のためにも重要です。

開業医自身は労働基準法の適用外でも、長時間労働が続けば自身の健康リスクとなり、ひいてはクリニック経営にも悪影響を及ぼします。対応策としては、勤務体制の見直しと人員配置の最適化があります。例えば非常勤医師を増員したり、診療時間を短縮・分散したりすることで一人当たりの負担軽減を図りましょう。

また、看護師や医療事務によるタスクシフト・タスクシェアを進めて、医師でなくてもできる業務はスタッフに任せることも有効です。加えて、最新のITツールや医療機器を活用して業務効率を上げ、医師の残業そのものを減らす工夫も重要です。働き方改革関連法への対応状況は労基署などからチェックが入る可能性もあるため、36協定の締結や届出など法令遵守も忘れずに行いましょう。

3. 医療DX推進(マイナンバー保険証・オンライン診療など)の加速

医療のデジタル化(DX)が急速に進展している点も、クリニック経営の重要トピックです。政府はマイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」への移行を強力に推進してきました。

2023年以降、オンライン資格確認システムの導入が全国の医療機関で進み、従来型の健康保険証で受診すると追加負担が発生する仕組みも導入されています(2023年4月以降、対応医療機関で紙の保険証を使うと1回あたり40円の特例加算、患者負担は3割で約12円増)​。

当初、現行の保険証は2024年秋で廃止予定でしたが、経過措置として2025年12月まで従来保険証も利用可能となり​、厚労省は移行期間中にシステムの安定運用や国民理解の醸成を図っています。

さらに最新ニュースでは、2025年夏頃からスマートフォンにマイナ保険証機能を搭載し、対応する医療機関ではスマホで保険証確認が可能になる見通しです​。オンライン資格確認の義務化範囲も拡大しており、訪問看護ステーション等も含め未導入の場合は指導の対象となるなど、もはやデジタル対応は避けられません。

医療DXは保険証だけではありません。電子処方箋も2023年より運用が始まり、院外薬局との間で処方情報を電子的にやりとりできる環境整備が進んでいます。電子カルテの標準化・情報共有も国家プロジェクトとして動いており、2025年4月にはクラウド上で医療機関連携する「電子カルテ情報共有サービス」の本格運用が予定されています​。

2024年度診療報酬でも「医療DX推進体制整備加算」が新設され、マイナ保険証の活用・電子処方箋・電子カルテ連携の体制を整えた医療機関に加算が認められるようになりました。

これはデジタル化への投資に対するインセンティブであり、クリニックにとっても見逃せないポイントです。また、オンライン診療(遠隔診療)の恒久化も重要な流れです。新型コロナ禍で特例的に解禁された初診からのオンライン診療は、ガイドライン整備の上で2022~2023年に制度化が進みました。

現在では一定の要件下で初診からオンライン診療が可能となり(診療報酬上の評価も新設)、再診についても対象患者の拡大や緊急時対応要件の緩和が行われています。オンライン診療は患者の通院負担軽減や感染症対策のみならず、クリニックにとっても新たな診療形態として定着しつつあります。

経営者への影響と対応: デジタル化の波に乗り遅れることは、今や経営上のリスクと言えます。

まずマイナ保険証対応は必須です。未対応だと患者にも追加費用がかかり不評を買う恐れがありますし、行政指導の対象ともなり得ます。既にオンライン資格確認システムを導入済みのクリニックでも、操作方法のスタッフ教育やシステム障害時のリスク管理が欠かせません。

患者さんから誤登録や情報漏洩に対する不安の声があれば、丁寧に説明し信頼を得るよう努めましょう。次に電子カルテ・電子処方箋の導入です。電子カルテは情報共有の円滑化や紙カルテ保管コスト削減など多くのメリットがあり、少人数で効率の良い医療体制を作る鍵となります。政府目標では遅くとも2030年までにほぼ全ての医療機関で標準的な電子カルテ運用を実現する方針です​。

補助金制度も活用しつつ、自院に合ったITシステムへの移行を検討しましょう。オンライン診療についても、患者ニーズに応じて再診オンライン枠を設けるなど取り入れることで差別化につながります。

高齢者層にはハードルがあるものの、働き世代や子育て世代には好評です。最後に、こうしたDX推進にあたりサイバーセキュリティ対策も忘れずに強化してください。電子データ化が進むほど、個人情報漏えい対策やシステムバックアップは経営リスク管理の観点で重要です。

4. 医師偏在是正と地域医療構想:都市vs地方のクリニック経営

地域による医師数・医療資源の偏在も2025年の大きな課題です。都市部ではクリニックの過剰出店が問題視される一方、地方や郊外では医師不足が深刻となっています。

厚生労働省は2024年末に、診療所過剰地域で新規開業する医師に一定の要件を課す制度を打ち出しました。

具体的には、外来医師が極端に多い都市部等で新規開業する場合、その地域で不足している在宅医療などの機能を担うことを都道府県が要請できる仕組みです​。要請に従わない場合は公表や保険医療機関指定期間の短縮といった措置も可能とし、法改正により実現を目指す方針です。

これは偏在是正に向けた強力なメッセージであり、都市部で「好きな診療科だけ開業」は難しくなる可能性があります。

一方、地方では医療提供体制の集約化が進んでいます。病院・有床診療所のベッド数は年々減少しており、地域医療構想に沿って病床の再編や在宅医療への転換が図られています。

いわゆる**「2025年問題」として、第一次ベビーブーム世代(団塊の世代)が全員75歳以上の後期高齢者となり、人口の約5人に1人が75歳以上となる超高齢社会が目前です。高齢者人口の急増に対し、生産年齢人口の減少で医療資源が足りなくなる懸念もあります​。

このため各地域では、限られた医師・看護師で多くの高齢患者を支えるべく、地域包括ケアシステムの構築や在宅医療の拡充が進められています。

都市部でも独居高齢者の増加により在宅医療ニーズは高まっており、厚労省が前述のような政策で新規開業医に在宅医療を求めるのも、このニーズに応える狙いがあります。

また財政面でも、医療費適正化のため地域別診療報酬**の導入が検討されるなど、医療資源の地域間再配分に向けた議論が活発化しています​。

経営者への影響と対応: 都市部の開業医は、今後開業規制や報酬減算など逆風にさらされる可能性があります。すでに都市部でクリニックを経営している場合でも、地域の医療ニーズに貢献する姿勢が重要です。

具体的には在宅医療や訪問診療への参入を検討したり、夜間・休日診療の提供、介護施設との連携による地域包括ケアへの協力など、地域に不足するサービスを積極的に担うことが求められます。そうすることで地域医療計画への貢献度が高まり、将来的な制度変更にも適応しやすくなるでしょう。

逆に地方・郊外でクリニックを営む場合は、医師数が少ない分広範なニーズに応える努力が必要です。同時に自治体や医師会からの支援策(医師確保の補助や遠隔診療支援など)が利用できるケースもありますので、情報収集に努めてください。

新規開業を検討している医師は、あえて医師不足地域で開業する選択も一考に値します。

地域医療に貢献できるだけでなく、競合が少なく患者確保が容易、自治体から誘致支援を受けられるなどメリットも大きいです。

今後は「どこで開業するか」に加え「その地域で何を提供できるか」が問われる時代です。開業場所選定の際は人口動態や医療資源状況を入念に調査し、地域ニーズと政策動向に合った経営プランを描きましょう。

5. クリニック経営環境の変化と開業・承継の新潮流

クリニックを取り巻く経営環境もここ数年で大きく変化しています。まず、コロナ禍や少子化の影響で患者数・収益が伸び悩むクリニックが続出しました。

実際、クリニックの約8割が減収となっており、特に耳鼻科・小児科でその傾向が顕著だったと報告されています。感染症流行による受診控えやマスク生活で感冒患者が減少したこと、子どもの人口減少などが一因です。また都市部では新規開業の競争激化で患者の奪い合いが起こり、地方では後継者不在による閉院が増えるなど、それぞれ課題を抱えています。

さらに2022年以降の物価上昇はクリニック経営にも重くのしかかりました。光熱費や医薬品費の高騰、スタッフの人件費アップ要請、テナント賃料の上昇など、固定費増加による利益圧迫が全国的に見られます​。

特に昨今の建設資材価格・人件費高騰により新規開業の建築コストが跳ね上がっているため、独立開業を志す医師にとって大きなハードルとなっています​。

こうした中で注目されるのが、クリニック開業・経営のスタイル変化です。2025年現在、テナント開業やクリニックM&A(事業承継)が新たな潮流となりつつあります。従来は土地建物から新築で開業するケースが多かったものの、今や「医療モールに入居する」「駅前ビルの一角を賃借する」といったテナント型開業が主流になり始めました​。

都心では一等地の賃料高騰が課題ですが、再開発エリアの医療モールなど有望な立地を確保して開業するチャンスも生まれています​。

一方、後継者不足に悩む既存クリニックを第三者が買い取り承継するM&Aも活発化しています​。日本全体で後継者不在の中小企業が60万社以上ある中、クリニックも例外ではなく、親族以外へ事業を譲る「第三者承継」が一般化しつつあります。

実際、年間約6,400件のクリニックが閉院する一方で7,300件が新規開業しているという統計もあり、この新設・廃業の多さを背景にクリニック譲渡マーケットが拡大しています。

2025年の開業トレンドを総括すると、高騰する建築費・家賃を避けるためにテナント開業を選び、後継者難のクリニックはM&Aで引き継ぐ流れが加速していると言えるでしょう​。

経営者への影響と対応: クリニック経営の安定・発展には、環境変化を踏まえた戦略転換が欠かせません。まず既存クリニックの経営者は、自院の収支を改めて点検し、無駄な経費の削減に努めましょう。例えば交際費や旅費など経営に直接関係ない支出を見直すことで、多少なりとも利益率を改善できます​。

同時に、地域ニーズに合った差別化戦略を打ち出すことも重要です。競合クリニックとの差別化ポイント(専門性の高い診療、充実した検査設備、オンライン診療対応、地域密着のサービスなど)を強化し、患者から選ばれるクリニックを目指しましょう​。

一方、近い将来に引退を考える院長先生は、早めに事業承継の計画を立てることをお勧めします。後継者がいない場合でも、第三者への事業譲渡という選択肢があります。クリニックM&A市場は拡大傾向にあり、適切なマッチングができれば譲渡によってクリニックの命脈を次世代に繋ぐことが可能です。

専門の仲介業者や医師会の承継相談窓口などを活用し、クリニックの資産価値が高いうちに打診してみると良いでしょう。

新規開業を目指す先生にとっては、重い初期投資を抑える開業手法としてテナント開業や既存クリニックの継承が現実的な選択肢となっています​。一から建築せずとも、医療モールやビルテナントに入れば設備面の初期費用を大幅に軽減できますし、開業までのリードタイムも短縮できます。承継開業であれば患者リストやスタッフごと引き継げる利点もあり、軌道に乗せやすいでしょう。

もっとも、譲渡元の経営状況や評判などデューデリジェンスは入念に行い、リスクの見極めが必要です。総じて、2025年以降のクリニック経営者は柔軟な発想で経営形態を見直すことが求められます。環境変化に適応しながら、「患者に選ばれ続けるクリニック」を目指して戦略をアップデートしていきましょう。


以上、2025年現在で注目すべきクリニック経営に関する5つのニュース&トピックを解説しました。医療政策の動向から現場の働き方、デジタル技術の活用、地域医療の課題、そして開業・継承戦略まで、クリニック経営には実に多面的な視点が求められます。ぜひ日々の経営にこれらの情報を役立てていただき、変化の時代を乗り切るヒントとしてご活用ください。

参考文献・情報源: med-pro.jpmed-pro.jpfukushishimbun.commedical-jpn.jpmedical-jpn.jpdiamond.jpgemmed.ghc-j.commhlw.go.jpmedicalplus.infojms-support.jpmedisupp.jpなど公的機関発表や業界ニュースを参照しました。今後も厚生労働省や日本医師会の発表、業界団体のニュースレターなどをチェックし、最新情報のアップデートに努めましょう。

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