医療法人化予定があっても小規模企業共済に加入するべきなのか?

法人化

小規模企業共済は、個人開業医でも使える節税手段であり、大切な退職金の元手ですが、医療法人になると参加資格をなくします。そこで、将来的に医療法人になる予定がある場合、小規模企業共済に加入した方がいいのかという相談をよく受けます。今回は、継承4年目の歯科医O先生のケースをもとに説明しましょう。

U先生
U先生

継承してから4年目で売り上げが順調に伸びてきたので、税金対策を始めたいと思っています。 税理士の方から小規模企業共済を勧められました。将来的に医療法人化を考えているのですが、数年後に医療法人化する可能性がある場合でも、小規模企業共済に加入した方が良いのでしょうか?

医療法人化の準備が進んでいる場合、加入は適切ではありません。ただし、「将来的に医療法人化するかもしれないけど時期は決まっていない」という状況であれば、専従者である奥様と一緒に小規模企業共済に参加することをおすすめします。その理由を詳しく説明いたします。

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小規模企業共済は医療法人化したらどうなる?

個人事業のクリニックを医療法人化すると小規模企業共済の加入資格を喪失します。

解説記事などでは小規模企業共済の任意解約では「掛金の納付期間が240ヶ月に満たないで任意解約すると、解約手当金が掛金の総額を下回る」と書かれているので勘違いする方が多いのですが、医療法人化に伴う加入資格喪失により得られる返戻金は「共済金Aとなります。

共済金などの分類を以下の表にまとめます

共済金等の種類請求事由
共済金 A①個人事業を廃業した場合
共済金 B老齢給付
準共済金②個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなった場合
解約手当金任意解約
機構解約(滞納による機構側からの解約)
③個人事業を法人成りした結果、加入資格はなくならなかったが、解約をした場合。

この表は何の補足もなければ、個人開業医の医療法人化が①②③のどの事由に該当するのか分かりづらいですね。

こう見ると②の事由で「準共済金」になりそうじゃないですか?

そう思ってしまいそうですが、公式サイトに以下のように明記されています

医療法人や一般社団法人など、直接営利を目的としない法人の役員に就任した場合、小規模共済への加入資格が認められません。

この場合、同一人通算をすることは出来ず、個人事業の廃業による共済金請求(請求事由コード1101)をしていただくことになります。

共済サポート navi 小規模企業共済FAQ

小規模企業共済の判定では廃業ということになり、受け取れる共済金は「共済金A」になります。

共済金A」の場合、掛金納付期間が6ヶ月~36ヶ月までは掛金総額36ヶ月以降は掛け金以上のお金が返戻されます。

つまり、医療法人化で小規模企業共済の加入資格を失った場合、6ヶ月以上掛金を納めていれば、それらの掛金はすべて戻ってくるわけです。

36ヶ月目以降の返戻額の計算は非常に複雑であるため、公式のシミュレーターを使用して試算することをおすすめします。(小規模企業共済加入シミュレーション

最も注意すべき点は、加入期間が6ヶ月未満の場合です。

6ヶ月未満の場合、掛け金は完全に掛け捨てとなるため、返戻金は0円となってしまうのです。

法人化による小規模企業共済の解約は、6ヶ月以上の加入で全額返戻されることが分かっておけばOKです!

小規模企業共済のポイントをおさらい!

掛け金の全額が所得控除になる

小規模企業共済の掛金は、所得控除の対象となり、税金の節税対策として有効です。具体的には、確定申告時に「小規模企業共済等掛金控除」として、支払った共済の掛金を全額所得控除することができます。

退職金の代わりになる

小規模企業共済は、将来の退職金としての代替手段として利用できます。自身の事業を廃業する際や退職する際に、これまで積み立てた共済金を受け取ることができるのです。この共済金は、例えば個人事業主の場合、事業の廃業や突然の死亡時、または65歳以上で掛金を一定期間以上支払った場合に受け取れるものです。これにより、将来の安定した収入を確保する手段として利用できるのです。

共済金の受取りは、所得の種類の中でも「退職所得」として計上できるので、こちらも節税の観点からかなりお得になります。

iDeCoとの併用も可能

小規模企業共済とiDeCoは、併用することができます。

小規模企業共済の掛金は、月額7万円が上限です。

そしてiDeCoの掛金は開業医の場合、月額6万8,000円まで設定することが可能です。

仮に2つの制度で上限いっぱいまで拠出した場合、年間最大151万6,000円(84万円+81万6,000円)の課税所得控除を受けることができます。

※勤務医の方のiDeCoの掛け金上限はやや複雑ですので、こちらの記事を参考にしてください

結論

ここまでお話した通り、医療法人を設立しようとしている場合、小規模企業共済への加入は避けるべきです。その理由は、共済に加入した後、6ヶ月未満(掛け金を納めた月が6ヶ月に満たない)で解約を行うと、共済金を受け取ることができないからです。

したがって、6ヶ月以内の解約を予定している方は、小規模企業共済への加入を控えるべきだという点を覚えておいてください。

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