2024年4月をもって、医師にも時間外労働の上限規制が適用されることとなります。この規制は、医師の働き方改革を推進し、健康な労働環境を確保するための重要な一環です。本記事では、医師の働き方改革の概要や規制のポイント、医療機関の取り組みについて詳しく解説していきます。
医師の働き方改革の背景
医師の働き方改革が注目されるようになった背景には、長時間労働や労働環境の改善の必要性があります。病院常勤医の約4割が年960時間を超える時間外・休日労働を行っており、特に救急、産婦人科、外科などの部門や若手医師においては、長時間労働の傾向が強いことが指摘されています。
また、労働時間の管理体制が不十分な医療機関も存在し、労働者の健康や安全を脅かす要因となっています。これらの課題を解消し、医師が長期間にわたって健康に働き続けるためには、労働環境の改善が必要不可欠です。
時間外労働の上限規制
2024年4月からは、医師にも時間外労働の上限規制が適用されます。年間の時間外労働時間は原則として960時間、月間では100時間未満となります。これにより、医師の労働時間を適正化し、健康な労働環境を実現することが目指されています。
ただし、医療機関の種類や業務内容によっては、上限規制に対応することが難しい場合もあります。そのため、厚生労働省はABCの3つの基準を設けており、医療機関は自身がどの基準に該当するかを確認し、適切な健康確保措置を講じる必要があります。
- A基準(一般労働者と同程度の上限):960時間
- B基準(医師を派遣する病院):1,860時間(2035年度末を目標に終了)
- C-1基準(臨床・専門研修):1,860時間
- C-2基準(高度技能の修得研修):1,860時間
医師の労働時間を把握し、上限を遵守するためには、労働時間の客観的な管理体制を整備することが必要です。
健康確保措置の義務化
時間外労働の上限規制とともに、医師の健康確保措置も義務化されます。これには、面接指導や十分な休息時間の確保などが含まれます。医師の健康を確保するためには、医療機関が積極的に取り組む必要があります。
面接指導では、医師の健康状態を確認し、労働負荷の軽減やストレスの解消に向けた支援を行います。また、勤務間インターバル制度を導入することで、医師に十分な休息時間を確保することが求められます。連続勤務時間制限や代償休息の導入も検討すべきポイントです。
医療機関はこれらの健康確保措置を積極的に実施し、医師の健康と働きやすさを追求することが求められます。
タスク・シフティングの導入
医師の時間外労働の削減に向けて、タスク・シフティングの導入が推奨されています。タスク・シフティングとは、医師以外の医療従事者に一部の業務を委任し、役割分担を進めることを意味します。
例えば、診療放射線技師や臨床検査技師による診断補助や、看護師による患者のケアなど、医師以外のスタッフによる業務拡大が行われます。これにより、医師の負担を軽減し、時間外労働の削減につなげることが期待されます。
また、臨床工学技士や救急救命士など、医療従事者間での業務の再編成も検討されています。これにより、医師の専門性を最大限に活用しながら、効率的な医療提供が可能となります。
医療機関の取り組み
医療機関は、医師の働き方改革を実現するためにさまざまな取り組みを進める必要があります。以下では、具体的な取り組み例を紹介します。
変形労働時間制の導入
変形労働時間制は、医師の業務を繁閑に応じて柔軟に配分するための制度です。これにより、労働時間を自由に調整することが可能となります。医師の業務量を維持しながら、時間外労働の削減を図ることができます。
労働時間の明確化
医療機関では、労働時間に当たるものとそうでないものを明確に区分することが重要です。診療に関連する業務や会議・打合せなどは労働時間に含まれますが、休憩・休息や自己研鑽に充てられる時間は労働時間として計算しません。
タスク・シフティングの推進
医師以外の医療従事者に業務を委任し、タスク・シフティングを推進することで、医師の負担を軽減することができます。診断補助や患者ケアなど、医師以外のスタッフによる業務拡大を進めることで、時間外労働の削減につなげることができます。
まとめ
2024年4月から始まる医師の働き方改革には、時間外労働の上限規制や健康確保措置の義務化が含まれます。医師の長時間労働や労働環境の改善が求められる中、医療機関は変形労働時間制の導入やタスク・シフティングの推進など、様々な取り組みを行う必要があります。
医師の働き方改革を実現するためには、医療機関の意識改革と労働環境の整備が不可欠です。医師の健康と働きやすさを追求し、より良い医療の提供を目指しましょう。
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