老後資金不足に関する話題は以前からあがっていますが、フリーランス医師の方は、一般的なサラリーマン家庭、あるいは一般的な医師よりもさらに注意が必要になります。
そこで、フリーランス医師であるW先生の事例をもとに、老後資金の準備で押さえておきたいポイントを解説したいと思います。
現在私はフリーランス医師として働いているため、退職金制度がなく、厚生年金などに加入する期間も短いため、将来の備えをする必要性を感じています。貯金はある程度できていると思っていますが、それだけで十分なのか不安です。
現在57歳の美容外科医(フリーランス)
年収は約1,800万円、資産は約4,500万円
家族構成は奥様(54歳 専業主婦)、長男(27歳、医師)
W先生は退職金がなく、年金も十分ではないため、60代で仕事を辞めた場合、老後の資金不足が起こる可能性が高いと考えられます!
支出に注目しよう!
老後の資金準備の話題では、ほとんどの人が、どれだけ貯金するべきかに注目していますが、それ以上に毎月の支出に注目するべきです。
支出が大きすぎれば、老後資金が不足する可能性はぐんと高くなります。
単純な計算ですが、毎月の支出が50万円の方であれば、1年間で600万円、30年間で1億8,000万円の支出となります。
「人生100年時代」となった現代では、「老後」を30年、あるいは35年と想定していなければ十分とは言えません。支出が大きい方は想像よりも大きな老後資金が必要なのです。
老後に必要な資金の計算
老後資金 =(想定死亡年齢 ー 引退年齢)×(支出 ー 引退後収入)
※引退後収入=公的年金 + 私的年金 + 不労所得
※支出や引退後収入は年額
老後資金について、シンプルに定義してみました。あくまで概算であることをご留意ください。
例えば、95歳で自分が死ぬと想定して、仕事を引退する年齢が65歳、毎年600万円の支出があって、引退後収入が480万円の方の場合、
(95歳 ー 65歳)×(600万円ー480万円)=30年 × 120万円=3,600万円
この例の場合、3,600万円が老後資金として必要になります。
医師家庭は、現役時代の収入が多い分、支出も多くなりがちです。
さらに、個人開業医やフリーランス医師の場合、厚生年金ではなく国民年金に加入することになるので、引退後収入が他の医師よりも少なく、結果として多額の老後資金が必要なケースが多いのです。
そもそも引退後収入が支出を超えれば安心
先程の式を見てみましょう。
老後資金=(想定死亡年齢 ー 引退年齢)×(支出 ー 引退後収入)
この式の右側、支出 ー 引退後収入 に注目します。
この値が0以下、つまり引退後の収入が支出を超えると、そもそも老後資金が必要なくなります。
なぜならそれはお金が減らない状態を作れているので、何歳まで生きても貯金額や資産額が減らないことを意味しているからです。
老後資金として貯めたお金が減っていく状態よりも、そもそも資産額が減らない状態のほうが安心ですよね
支出 ー 引退後収入が大きい場合は、現役時代から支出を減らすことや、リタイア後の収入を増やすことのどちらか、もしくは両方を行うことが必要です。
我慢することなく支出を減らす方法
生活レベルは、向上させることは簡単ですが、減らすことは非常に困難であると言われています。
特に収入が高ければ高いほど、支出に無頓着になっていきます。もちろん、自分の幸福に繋がっている支出はお金の使い道として全く問題ありませんが、幸せにつながっていない無駄な支出も存在します。
まずは、支出はブレーキを掛けていないとどんどん増加してしまうことを認識して、適切な節約意識を働かせるようにしておきましょう。
無駄な支出としては、利用頻度の少ないサブスクリプションサービスや、外食費、衣料費などが挙げられます。
またスマホのデータ利用量が十分な場合、今よりも安いプランに変更することで、通信費を下げることができます。
無駄な支出を削減するためには、定期的に家計簿をチェックし、改善点を見つけることが大切です。
引退後のための不労所得を作る方法
先程の式をもう一度確認しましょう。
老後資金 =(想定死亡年齢 ー 引退年齢)×(支出 ー 引退後収入)
※引退後収入=公的年金 + 私的年金 + 不労所得
※支出や引退後収入は年額
引退後収入とは、大雑把に、公的年金 + 私的年金 + 不労所得 と表現できます。これらの金額を増やしていくことで、必要な老後資金を減らしていくことができます。
公的年金
公的年金には、会社員や勤務医が加入する厚生年金と、個人開業医やフリーランス医師が加入する国民年金があります。
厚生年金の方は、現役時代に支払った社会保険料が多ければ多いほど増えていきます。
しかし国民年金は保険料が固定(2024年現在は月額16,980円)である代わりに年金額も固定(2024年現在は月額68,000円)です。
そのため、残念ながら個人開業医やフリーランス医師が公的年金を増やすことはできません。※一応「付加年金」を支払えば増やすことはできますが、影響としては少ないです。
私的年金
私的年金は、民間保険会社が提供する個人年金保険や、各企業・団体が独自に導入している企業年金、公的制度であるiDeCo(個人型確定拠出年金)などが該当します。
個人年金保険や企業年金については個別に損得を計算しなければなりません。
特に個人年金保険は手数料が高かったり、仕組みが複雑すぎて理解しないまま加入していたりするケースが多いため注意が必要です。
私的年金の中で最もパフォーマンスが高いのがiDeCo(個人型確定拠出年金)です。
iDeCoに関してはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
不労所得
不労所得の定義は曖昧ですが、基本的に「自分が働かなくても入ってくる所得」を指します。そのため、引退後収入としてカウントできるのです。
不労所得は、自分以外の「ヒト・モノ・カネ」に働いてもらうことで構築することができます。最も分かりやすいものは「カネ」に働いてもらう投資ですね。
代表的なインデックスファンド投資で期待できる利益は年率5%ほどです。
例えば、100万円を投資に回した場合、100万円をリスクに晒して、対価として5万円を得るというのが投資の基本的な姿勢になります。
まさに、お金に働いてもらっている状態ですね
投資に関しても先程のiDeCoの記事で紹介しているので、併せて参考にしてみてください。
まとめ
W先生は、コンサルティングの結果から引退年齢の65歳には、金融資産7,000万円と、引退後収入として公的年金やiDeCo、不労所得などで月40万円が得られる見込みとなりました。
また、65歳以降の支出も計算して、引退後の収支が月々10万円程度に収まることが分かりました。長期的に安心して暮らすことができる水準となったのです。
今後は収支0を目指して、マイクロ法人の設立も視野に入れ、100歳まで生きても安心して暮らせるようにしていく予定です。
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