副業やアルバイトを検討している医師や歯科医師の方々がまず思いつく選択肢は「他院でのアルバイト」かと思います。しかしながら、他院でのアルバイト(医療行為)は基本的に事業所得ではなく給与所得として支給されてしまいます。

給与所得だと何が問題なんですか?

給与所得で受け取ると、本業の給与所得と合算されて社会保険料の計算が行われます。また、事業所得で使えるはずの控除や支出の経費計上も行えないため、税負担が大きくなります。
本記事では、給与所得ではなく事業所得として収入を受け取るメリットを解説しつつ、事業としてできる医師・歯科医師におすすめの副業を5つ紹介します。

様々な選択肢を知ることで、自分に最適な副業を選ぶことができます。副業を選ぶ参考になると嬉しいです!
医療系のアルバイトは基本的に事業所得にならない

おさらいですが、一般的な医療系アルバイトは給与所得として分類されます。
たとえば、夜間救急当直や日勤アルバイトなどは、病院や医療機関との雇用契約に基づく業務であり、個人事業化して事業所得で受け取ることは基本的にできません。
副業収入が給与所得の場合、本業の給与所得と合算して社会保険料が計算されますし、所得税も同様に増加します。
本業の給与所得ですでに高い税率が適用されているため、副業で追加される所得税にも同様の税率がかけられてしまいます。

※事業所得でも所得税は追加されますが、事業所得でしか使えない控除枠や、給与所得者では経費に出来ない支出を経費にすることで課税所得を圧縮することが出来ます。
そのため、効率的に収入を増やすためには、給与所得ではなく事業所得として収入を得るという選択肢を考慮する必要があります。
事業所得で受け取るメリット

個人事業主として活動し、事業所得を得ることで以下のようなメリットが期待できます。
1. 社会保険料が追加されない
副業収入を、給与所得ではなく事業所得で受け取る場合、追加の社会保険料が課されません。
「勤務医としての給与所得」と「個人事業による事業所得」が同時に発生している場合、厚生年金保険料や健康保険料は、給与所得のみを計算基準にするためです。
特に、厚生年金保険料や健康保険料の負担が重い医師にとって、この違いは非常に大きなメリットとなります。

給与所得と事業所得の二刀流がお得と言われる主な理由がこちらですね
2. 所得税の追加をある程度抑えられる
事業所得では経費として認められる範囲が広いため、実質的な課税所得を減らすことが可能です。
例えば、家賃や電気代、通信費のうち、事業に使用している割合分だけ経費にすることができます(家事按分)。
また、仕事に必要な書籍代やパソコンの購入費、セミナー受講料なども経費として計上できます。
さらに青色申告特別控除を利用することで、最大65万円の控除を受けることも可能です。
個人事業主となった場合、毎年確定申告を行わなければなりません。確定申告をする際に、簡易的な申告方法である「白色申告」と複雑で正確な「青色申告」を選択することができます。青色申告で、さらに電子申告(オンライン上での手続き)を行なった場合、65万円の控除を受けることができます。
一昔前までは、青色申告を個人が行うのは難しかったが、会計ソフトの発達によりハードルが大きく下がっています。
年間150万円の副業収入があり、家賃やパソコンの購入費用などを50万円を経費計上して、青色申告特別控除で65万円の控除を受けた場合、課税所得はたったの35万円となります。
医師におすすめの個人事業主としてできる副業5選
ここからは、医師に適した個人事業主としての副業を5つ紹介します。それぞれの特徴や具体的な始め方、評価を含めて解説します。
1. 医師ブログ・医療メディア運営

医師としての知識や経験を活かし、医療情報を発信するブログは副業として人気があります。広告収入やアフィリエイト収入を得ることが可能です。
| 指標 | 評価 |
|---|---|
| 作業・労働の手軽さ | ★★★★☆ |
| 費用の安さ | ★★★★★ |
| 収益性 | ★★★★☆ |
| 収益を得るまでの早さ | ★★☆☆☆ |
| 本業との相乗効果 | ★★★★★ |
医師ブログは、医療情報を必要とする幅広い読者層をターゲットにできます。
また、医療知識を持っている医師にしか執筆できないことも多いので、競争相手が限定されるのが強みと言えます。
例えば、特定の疾患に特化したブログを作成することで、患者やその家族からの信頼を得ることができます。
最新の医療情報や研究成果を簡潔にわかりやすく解説することで、一般読者だけでなく医療従事者にも支持されるブログを運営できます。

自己運営するブログは、特に納期があるわけではないので、忙しい医師にとっては理想的な副業だと考えています。
医師ブログについては、こちらの記事でメリットや始め方をまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
2. 医療ライター

医師ブログと似ていますが、メディアなどから執筆依頼を受けて、医療ライターとして、医療系の専門記事やコラムを執筆する仕事もおすすめです。
医師としての専門知識が求められるため、競争率が低く高単価が期待できます。
| 指標 | 評価 |
|---|---|
| 作業・労働の手軽さ | ★★★☆☆ |
| 費用の安さ | ★★★★★ |
| 収益性 | ★★★☆☆ |
| 収益を得るまでの早さ | ★★★☆☆ |
| 本業との相乗効果 | ★★★★☆ |
医療ライターの需要が高いのは、Googleの検索エンジンが専門家による記事を高く評価するからです。

そのため、記事監修という形で名前と肩書きだけでも貸してほしい、という依頼も多くあります
製薬会社や医療系メディアからの依頼で記事を執筆することが一般的です。
報酬は1記事あたり数万円から十数万円と高額な場合もあります。
特に、エビデンスに基づいた記事や、専門性の高いトピックの記事は高く評価されやすいです。
メディアに直接アプローチ
医療ライターとしての依頼を受けるために、メディアに直接アプローチする方法があります。
医療メディアや健康情報を発信しているサイトの、お問い合わせフォームなどを探して、医療ライターとして記事執筆ができる旨をメールで送信します。
メディア側は基本的に記事が増えることは嬉しいはずですから、法外な単価提案でない限り、邪険に扱われることは少ないでしょう。
メールの定型文を用意しておけば、何度も同じメールを作る必要がありませんし、好きなときに営業をかけることができます。
案件マッチングサイトで記事執筆依頼を探す
案件マッチングサイト(アウトソーシングサイト・クラウドソーシングサイト)で案件を探す、というアプローチもおすすめです。
案件マッチングサイトとは、「仕事を依頼したい側」と「仕事を受注したい側」をマッチングさせて、案件を発生させるプラットフォームです。
例えば、以下のようなサイトが最も有名な案件マッチングサイトです。
クラウドワークス

クラウドワークスは医療・健康系を含む幅広い分野の案件が集まる国内最大級のクラウドソーシングサービスです。
案件数が多く、初心者ライターでも参入しやすいのが特徴といえます。
医師としての専門性を活かせる記事監修や医療メディア向け案件も多く、実績づくりやスキル習得の場として有効でしょう。
ランサーズ

ランサーズは専門分野に強いクライアントが多く、医療資格や臨床経験を活かした高単価案件も多い案件マッチングサイトです。
プロフィールや実績で信頼を得やすく、継続依頼や長期契約につながりやすいのが特徴となっています。
医療ライターとして安定した受注を目指す中・上級者に適しています。
ココナラ

ココナラは基本的にワーカー側が案件に応募するのではなく、案件を設置しておくスタイルの案件マッチングサイトです。
案件に応募する手間がないため楽ですが、ワーカー側が価格競争しやすいというデメリットもあります。
案件を自分で定義して募集することができるので、記事執筆だけでなく、健康相談や医療監修など幅広いサービスを提供可能です。
自分の専門性を自分で定義して案件化できるような、セルフブランディングが得意な方に向いているといえます。
3. 医療セミナー、オンライン講座

医療セミナーの講師やオンライン講座の運営は、専門知識を直接伝える副業です。特定の分野に強みを持つ医師にとって有利な選択肢です。
| 指標 | 評価 |
|---|---|
| 作業・労働の手軽さ | ★★☆☆☆ |
| 費用の安さ | ★★★☆☆ |
| 収益性 | ★★★☆☆ |
| 収益を得るまでの早さ | ★★★★☆ |
| 本業との相乗効果 | ★★★★★ |
オンライン講座は、Zoomや専用プラットフォームを利用して行われることが多く、自宅から簡単に始められます。
例えば、「初心者向け内視鏡検査の基本」や「糖尿病治療の最新知識」といった講座を開設することで、受講者のニーズに応えられます。
4. クリニックコンサルティング

経営や診療方針に課題を抱えるクリニックを支援するコンサルティング業務は、経験豊富な医師に適した副業です。
| 指標 | 評価 |
|---|---|
| 作業・労働の手軽さ | ★☆☆☆☆ |
| 費用の安さ | ★★☆☆☆ |
| 収益性 | ★★★★★ |
| 収益を得るまでの早さ | ★★★☆☆ |
| 本業との相乗効果 | ★★★★☆ |
例えば、新規開業予定のクリニックに対して、地域特性を考慮した患者ターゲティングやマーケティング戦略を提供することで、成功率を高める手助けができます。
また、既存のクリニックの診療フローを改善し、患者満足度を向上させる提案も価値があります。
5. 健康・医療関連の商品開発や監修

健康食品や医療機器、アプリの監修や商品開発に携わる副業もあります。
専門知識を活かし、クリエイティブな仕事に挑戦できる点が魅力です。
| 指標 | 評価 |
|---|---|
| 作業・労働の手軽さ | ★★★★★ |
| 費用の安さ | ★★★★☆ |
| 収益性 | ★★★★☆ |
| 収益を得るまでの早さ | ★★★☆☆ |
| 本業との相乗効果 | ★★☆☆☆ |
具体例として、医療機器メーカーと共同で新製品を開発したり、健康管理アプリの監修を行うことで、専門的な意見を提供しつつ副収入を得ることが可能です。
副業の評価一覧表
| 副業内容 | 作業・労働の手軽さ | 費用の安さ | 収益性 | 収益を得るまでの早さ | 本業との相乗効果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 医師ブログ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ |
| 医療ライター | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
| 医療セミナー・講座 | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| クリニックコンサルティング | ★☆☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
| 商品開発・監修 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ |
医師の副業で成功するためのポイント
最後に、医師が個人事業主として副業を成功させるためのポイントをお伝えします。
- 適切な届け出を行う: 個人事業主として開業届を提出し、事業所得として申告を行いましょう。
- 専門性を活かす: 医師としての知識や経験を活用できる分野に特化することで、競争力を高められます。
- 時間管理を徹底する: 本業と副業のバランスを取るため、スケジュール管理が重要です。
- リスクヘッジを意識する: 副業を開始する際には、小規模からスタートし、リスクを最小限に抑えることが大切です。
個人事業主として副業を始めることで、医師としてのキャリアに新たな可能性が広がります。専門性を活かし、自由な働き方を手に入れましょう!


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